台所帖 / 幸田文
¥1,760
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1904年、明治37年に幸田露伴の次女として東京・東向島に生まれた幸田文は、幼くして実母を亡くしました。7歳の頃から、父の教えで「だいどころ帖」をつけはじめ、13歳で父から家事全般の教育を受け台所を任されるようになりました。
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本書は、幸田文が台所という空間を舞台に考えたこと、経験したことを綴った随筆です。そして、巻末には、小説「台所のおと」も収録されています。
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この小説は、料理人の佐吉が病床から妻・あきのたてる音に耳をそばだてるところからはじまります。水栓をひねる仕草、野菜を切る音など彼女がうみだす音から彼女の状態を推測する佐吉に、あきは佐吉が重い病であることを悟られまいと覚悟を決めて家仕事をしています。
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台所という随筆でも「台所という場所は、公開のような、また自分だけの密室のような、ふしぎなところである。」とあるように、自分だけの空間に聞き耳をたてられている緊張感がこの小説から伝わってきます。
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彼女の文章は、とてもシャキッとしていて背筋が伸びますが、不思議とスッと身体に入ってきます。編者は娘の青木玉。あとがきは、翻訳家・随筆家である孫の青木奈緒。
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・著 者:幸田文
・編 者:青木玉
・発 行:平凡社
・発行日:2009年
・四六判、264頁